その日の失語症デイは一般デイの方達と合同で始められました。
失語症の方達が時々一般デイの方と一緒になると思わぬ交流が生まれ、新鮮な出会いが経験できます。
全失語のF氏はしつらえられたコーナーに座ってじっと皆さんの様子をご覧になっていました。
すると何時もマイペースで自分のことに忙しい一般デイの同じ年恰好のGさんは きっかけがあれば話しかけたくてF氏をちらちら見ながら、熱心にお向かいの方や介護士に語りかけます。
また同じく一般デイの 普段は誰のそばにも行かず、一人ごとのように何か言いながらフロア中を歩き回ってご自分の仕事に忙しいH嬢は 椅子を運んできてF氏のお隣りに黙ってじっと座っています。
みんなでCDの歌のメロデイーを聞いてカルタを取るゲームが始まるといつもは席につかないH嬢は、皆さんの中に座ってそれはそれは熱心にカルタ取りに参加されました。
あちらのコーナーではFさんが正しい絵カードを示されると恥ずかしそうに微笑みながらうなずかれます。
そしてお食事の時間になると、外を見ながら静かに何時ものように食べ始めたF氏.その横に、静かに椅子を並べて同じように外を眺めながらお食事をとられるH嬢。
それはそれは いい風景でした。
Fさんの存在に 何かいつもと違ったG氏の言動、そのオーラに魅せられたH嬢、失語症のF氏がそこに座っていて下さることがとっても大きなことなのでした。
言葉よりももっと強くて暖かくて安心なものをF氏は発していらっしゃったのですね。